「新・労働基準法」の実務解説
7.時間外労働の限度時間と激変緩和措置
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H10改正・労基法の実務解説2
文責は労務安全情報センターにあります。施行通達が出た段階で一部書き換えがありますからご注意ください。(H11.1.19 記)
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予備知識
1.改正法案の審議過程では、特に、女性労働者の時間外労働の制限撤廃とからんで種々の議論があった時間外労働の限度時間であるが、今回改正では、実質の延長限度時間には短縮等の措置はとられなかった。
2.36協定の延長限度時間に、法的根拠を付与し、届出の窓口である労働基準監督署におけるチェック(助言、指導)によって、実効担保を図るとする内容である。なお、従来、時間外労働の制限による保護を受けていた女性労働者については、一定要件の元に3年間の激変緩和措置が講じられることとなった。
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1.法的根拠規定の新設
労働大臣は「36協定の延長限度時間について基準を定める」とされ、平成10年12月28日労働省告示第154号が出されました。
基準となる限度時間は、従前と変更がありませんが、大臣告示の性格が変わっていることに注意する必要があります。即ち、従前は「指針:目安時間であり労使が考慮すべきもの」でしたが、今後は「基準:限度時間であり労使が遵守すべきもの」になったことです。
なお、対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制を適用する労働者には、次表右欄の基準が適用されます。(新規)
新・36協定の延長限度時間(告示154号)
一定期間 |
限度時間(H10告示) |
1年単位の変形労働時間制の限度時間(H10告示) |
1週間 |
15時間 |
14時間 |
2週間 |
27時間 |
25時間 |
4週間 |
43時間 |
40時間 |
1か月 |
45時間 |
42時間 |
2か月 |
81時間 |
75時間 |
3か月 |
120時間 |
110時間 |
1年間 |
360時間 |
320時間 |
なお、基準の詳細は以下のリンク先を参照してください。
■36協定の延長限度時間に関する労働省告示第154号
2.使用者及び労働者の過半数を代表する者等は、36協定の内容が基準に適合したものとなるようにしなければならない。(新設)
3.監督署長は使用者や労働者の過半数代表者に対し必要な助言及び指導を行うことが出来る。(新設)
注意
・36協定は労働基準監督署長に届出し受理されたした段階で効力が発生します。
(労使協定には、届出が効力発生要件になっているものと、単に手続きに過ぎないものの2種類ありますので注意が必要です。)
4.平成11年4月1日以降、保護規定が撤廃される女性労働者のうち、子の養育、家族の介護を行う一定範囲の労働者について、3年間(平成14年3月31日まで)は、延長時間の限度について、一般基準より低い基準が適用されます。いわゆる激変緩和措置とされるものです。(H10.12.28労働省告示第155号)
なお、この措置の適用をうけるには、本人が使用者にその旨申し出ることが必要です。
(本人が希望しない場合、及び、現行の時間外労働の制限が適用されない管理監督者、指揮命令者、専門業務従事者である女性労働者には適用がありません。)
<激変緩和措置の対象となる育児・介護の内容>
育児...小学校就学までの子を養育する労働者
介護...負傷、疾病などで2週間以上にわたり常時介護を必要とする者(配偶者=事実上の婚姻関係を含む、父母、子、配偶者の父母、並びに、同居して扶養している祖父母・兄弟姉妹、孫)を介護する労働者
<激変緩和措置対象者の延長限度時間>
事業 |
期間 |
限度時間 |
|
製造業、鉱業、建設業、運輸交通業、貨物取扱業等 |
1週間
1年間 |
6時間
150時間 |
(注) |
保健衛生業、接客娯楽業 |
2週間
1年間 |
12時間
150時間 |
|
林業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、教育・研究業、清掃・と畜業等 |
4週間
1年間 |
36時間
150時間 |
|
(注)決算に必要な業務は2週間12時間まで。
なお、激変緩和措置の詳細は以下のリンク先を参照してください。
■特定労働者の延長限度時間に関する労働省告示第155号
■施行通達確認
5.36協定の様式変更
今回改正で、36協定の延長限度時間に関する基準設定が、3通り(一般、1年変形、激変緩和措置)になっています。このことに伴い、36協定の様式(労基様式第9号)の一部が変更されました。
主たる変更点は、次の2点です。
(1)労働者数の男女別{を廃止したこと。
(2)時間外労働{の区分に@一般労働者A1年単位の変形制適用労働者B育児・介護関連の特定労働者、の3区分を設け、それぞれに協定する様式としたこと。
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Q:労働大臣告示を超えた36協定は直ちに無効になるのか
A:法条文の構成からみて、直ちには無効にならないと解するが、労働基準法違反となる。法違反であるから改善について文書勧告の対象となるほか、法36条4項に行政官庁による助言・指導権限が規定されたことにより、改善指導のトーンは従来と全く違ったものとなることが予想されます。
Q:36協定を従来通り、男女別に区分して異なる延長時間を協定することは認められるか。
A:労働基準法の個別条項に抵触するとはいえないが、激変緩和措置に該当する場合の取扱いを除き、改正男女雇用機会均等法の趣旨に反する。労働基準監督署の窓口でどのように取り扱われるかは未定。(施行通達等を踏まえこの項、加筆の予定です。)
Q:特別条項付きの36協定は従来どおり認められるのか
A:特別の事情が生じたときに限り、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定める、いわゆる「特別条項付の36協定」は、従来どおり認められています。(告示第154号第3条但し書、参照)