「新・労働基準法」の実務解説
 
3.退職時の証明−解雇事由の開示義務新設

 
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H10改正・労基法の実務解説1
文責は労務安全情報センターにあります。施行通達が出た段階で一部書き換えがありますからご注意ください。(H11.1.14 記)


退職時の証明−解雇事由の開示義務新設 予備知識
H10年改正のポイント
Q&Aでおさらい
施行通達確認




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予備知識

1. 今回改正で、使用者証明に退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。)が追加されたのは、労働契約の終了時における労働関係の内容を明確にし退職に関する紛争を未然に防止することを目的にしています。

 背景
 現在発生している個別労組紛争の内容を項目別にみますと、「賃金と解雇」をめぐるトラブルが主たるものです。
 中でも、中小零細企業においては、退職時の解雇などをめぐるトラブルがかなりの割合で発生しています。
 その場合の問題点の一つとして、例えば「解雇」については、解雇の意思表示が不明確なまま、労使の感情的なもつれとも重なり、(後日、第3者が双方の主張を確認しても)、必ずしも、解雇か自己退職かすら、判然としないケースが多いことが指摘されています。

2.今回改正のうち、特に解雇とその理由を使用者に書面で明らかにさせることとしたのは、(イ)紛争の未然防止、と併せて(ロ)後日の紛争処理の迅速解決に資するものと思われます。






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H10年改正のポイント



1.労働者が、退職の場合において、使用者に請求できる証明書の証明事項に、「退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。)」が追加されました。(下表を参照してください。)

  なお、今回改正は、労基法第22条の全3項のうち、第1項のみです。
  「証明書には労働者の請求しない事項を記入してはならない」(第2項)、また「ブラックリスト回覧による就業妨害の禁止」(第3項)は存続していますので、運用に当たって注意が必要です。


2.条文のタイトルが「使用証明」から「退職時の証明」に変更されました。



証明を請求できる事項

改正状況

注意事項

1. 使用期間 現行どおり 1.労働者から請求があったとき、使用者には遅滞なく証明する義務があります。
2.左の事項のうち、労働者が請求した事項のみの証明であって、請求しない事項の記載は禁じられています。
3.請求時期は限定されていないから、退職の前後に限らず、退職の後(後日)であっても使用者には退職時の証明が義務づけられることに注意が必要です。
2. 業務の種類 現行どおり
3. その事業における地位 現行どおり
4. 賃金 現行どおり
5. 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。) 新規追加!





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Q&Aでおさらい

Q:解雇事由についてですが、単に「解雇」とだけ記載して証明することでは足りませんか。

A:退職の事由(解雇についてはその理由を含む)」とされていますから、単に「解雇」と記載することでは足りません。何が原因で解雇になったかについてその理由を過不足なく記載すべきでしょう。
(どの程度まで具体的に記載する必要があるかは、現時点ではちょっと不明です。施行通達等が出るのを待ってこの項に修正記載を予定しています。)


Q:改正法の施行日前の退職者からの請求には、退職の事由の証明は必要ありませんか

A:改正法の「退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。)」の事項は、労働者の退職日を基準に、平成11年4月1日以降の退職・解雇者に適用されます。それ以前の退職等の労働者には、前記表の1〜4までの事項の証明に応ずればよいこととなります。