「新・労働基準法」の実務解説
 
4.1ヶ月単位の変形労働時間制

 
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H10改正・労基法の実務解説4
文責は労務安全情報センターにあります。施行通達が出た段階で一部書き換えがありますからご注意ください。(H11.1.24 記)


1ヵ月単位の変形労働時間制 予備知識
H10年改正のポイント
Q&Aでおさらい
施行通達確認




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予備知識


1.1ヵ月単位の変形労働時間制は、就業規則その他の定めにより、特定された週において40時間を超えて、また特定された日において8時間を超えてそれぞれ労働させることができる制度であり、昭和62年改正により設けられた。
 なお、H10年改正で「労使協定による方法」が認められることとなった。

2.現在、労働基準法で認められている変形労働時間制は「フレックスタイム制」「1年単位の変形労働時間制」「1週間単位の非定型的変形労働時間制」とこの「1カ月単位の変形労働時間制」の4種類である。他の変形労働時間制に比べて、導入要件(手続き)が簡便であるほか、わが国の賃金計算期間が1カ月である事業場が多いことから、比較的普及している制度である。





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H10年改正のポイント



1.従来は、1ヵ月単位の変形労働時間制の導入は、その旨を
  イ. 就業規則(10人以上の事業場)
  ロ. 就業規則に準ずるもの(10人未満の事業場)
  のいずれかに定めをする必要がありましたが、今回の労基法改正で、1ヵ月単位の変形労働時間制の導入要件に、「労使協定の締結による方法」が付加されました。
 

1カ月単位の変形労働時間制の導入要件(1又は2の方法)

手続き

1. これまで通り就業規則その他これに準ずるものに、その旨規定する方法
就業規則への記載事項は下表を参照してください。
就業規則の変更届
2. 労使協定を結ぶ方法(新設)
注意!
労使協定を結ぶ方法によって1ヵ月単位の変形労働時間制を採用する場合であっても、事業場で採用する労働時間制度は、就業規則の絶対的記載事項になっているため、10人以上の事業場では、就業規則への記載を省略することはできません。
労使協定の届出(新設)



2.一カ月単位の変形労働時間制を導入する場合の就業規則等への記載事項は次のとおりです。
  (この点は今回改正で変更はありません。)

 ○就業規則記載事項(1ヶ月変形)

1. 1ヵ月以内の一定期間を平均し1週間あたりの労働時間が40時間(特例業種は46時間)を超えない定め
2. 変形期間
3. 変形期間の起算日
4. 変形期間の各労働日の労働時間
5. 変形期間の各労働日の始業・終業時刻


3.今回の改正では、これに加えて「労使協定」による方法でも、一カ月単位の変形労働時間制の採用が可能になった訳ですが、
  この労使協定は、使用者と事業場の労働者の過半数を代表する者(過半数を組織する労働組合があればその労働組合、それがない場合は、挙手・投票等で民主的に代表者を選任しなければなりません。)とで締結して、所轄の労働基準監督署長に届出する必要があります。


4.新設の「労使協定」による場合、協定すべき事項は次のとおりです。
  なお、協定の届出は、労基法施行規則様式第3の2号によらなければいけませんから、実務上は、同様式の各項目を網羅して協定すればよいことになります。
 ○労使協定での協定事項(1ヶ月変形)
1. 1ヵ月以内の一定期間を平均し1週間あたりの労働時間が40時間(特例業種は46時間)を超えない定め
2. 変形期間
3. 変形期間の起算日
4. 変形期間の各労働日の労働時間
5. 有効期間
(就業規則に規定する場合に必要な「変形期間の各労働日の始業・終業時刻」は必要ありません。それに変わって「有効期間」を協定することになります。)









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Q&Aでおさらい


Q:就業規則の場合、届出は効力発生要件ではないと聞きましたが、新設の1ヵ月単位の変形労働時間制の労使協定は、届出を怠ると無効なのでしょうか


A:新設の「労使協定」は、届出を怠ると30万円以下の罰金に処されことがありますが、届出自体はは効力発生要件ではありません。
  労使協定が有効に締結されている限り1ヵ月単位の変形労働時間制の採用は認められます。


Q:1ヵ月単位の変形労働時間制の採用を「労使協定」によって行う場合でも、併せて、就業規則にも記載しなければならないとすれば、面倒なだけのような気がしますが、、、。

A:10人以上で就業規則の作成が義務づけられている事業場では、ご指摘の要素がない訳ではありまんが、基本的に、「就業規則に規定する方法と労使協定による方法のいずれによるか」は、使用者の選択に委ねられています。
今回、労使協定による方法の導入を認めたのは、他の変形労働時間制がすべて労使協定方式を採っているので、それらとのバランスをとったものと考えられます。また、労使の自主的な話合いを前提とした労使協定は、制度的に、より民主的であるとの考え方も背景にあるようです。