「新・労働基準法」の実務解説
 
8.年次有給休暇の改正

 
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H10改正・労基法の実務解説1
文責は労務安全情報センターにあります。施行通達が出た段階で一部書き換えがありますからご注意ください。(H11.1.15 記)


年次有給休暇 予備知識 H12年度適用表 施行通達確認
H10年改正のポイント H13年度以降適用表    
H11年度適用表 Q&Aでおさらい    




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予備知識


1.労働力の流動化は最近でこそ、大手企業でも加速している傾向がありますが、従来から中小企業に働く労働者の一部には、典型的な労働力流動化の現象が垣間見られました。

2.わが国の年次有給休暇制度は、継続勤務年数を要件としていますから、従業員の定着率が低い中小企業や転職志向の労働者には、現実問題として不利な制度でした。
  企業の労務管理の観点からみても、その企業全体の定着率が低いとは限りません(一定層の勤続年数は長い)から、企業内で年休付与日数の極端な格差が生じることは、望ましいことではありません。

3.これらのことを考慮して、今回の年次有給休暇改正では、付与日数を、雇い入れ後6年6ヶ月経過したなら、20日間として均等に付与すべく、継続勤務要件の一部を緩和したものと、理解することができます。








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H10年改正のポイント



1.年次有給休暇の付与日数は、雇い入れ後6ヶ月経過で10日間、1年6ヶ月経過で11日間、2年6ヶ月で12日付与までは現行と変わりません。

2.3年6ヶ月経過した時点から、勤続1年ごとに2日間ずつ付与日数を増加させなければなりません。(今回の改正ポイントは、この点にあります。)
  下表で説明しますと、

継 続 勤 務 年 数

0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5以上
付与日数 現行

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

平成11年度

10

11

12

14

15

16

17

18

19

20

20

平成12年度

10

11

12

14

16

17

18

19

20

20

20

平成13年度以降

10

11

12

14

16

18

20

20

20

20

20

平成13年度以降では、(平成11年度、12年度の表は経過措置ですから、ここでは無視してください。)
0.5 1.5 2.5年

10

11

12日

のように、2年6ヶ月までは1日ずつ加算されますが、
3.5 4.5 5.5 6.5年

14

16

18

20日

3年6ヶ月を経過した時点から、2日ずつの加算となり、勤続6年6ヶ月を経過した段階で年間20日を付与しなければなりません。
(付与日数の上限が20日間でそれ以上に増加しない点は従来と変更ありません。)


3.これに伴い、所定労働日数の少ない労働者に対する年次有給休暇の比例付与日数にも変更が加えられました。

4.都道府県労働基準局長の許可を得て認定職業訓練を受ける未成年者に対しては、特例(6ヶ月経過で12日付与からスタートし、3年6ヶ月経過で2日ずつ増加するため、5年6ヶ月経過時点から年間20日付与となります。)の適用があります。(労基法第72条)

継続勤務年数

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5年以上

付 与 日 数

12

13

14

16

18

20日










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平成11年度

1 一般の労働者に対する付与日数(平成11年度)

継続勤務期間

6箇月 1年6箇月 2年6箇月 3年6箇月 4年6箇月 5年6箇月 6年6箇月 7年6箇月 8年6箇月 9年6箇月以上 10
年6箇月以上
付与日数

10

11

12

14

15

16

17

18

19

20

20

参考/平成10年度まで(現行)

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20




2.所定労働日数の少ない労働者に対する比例付与日数(平成11年度)



週所定労働日数 1年間の所定労働日数

雇入れの日から起算した継続勤務期間

6箇月 1年6箇月 2年6箇月 3年6箇月 4年6箇月 5年6箇月 6年6箇月 7年6箇月 8年6箇月 9年6箇月以上
4日 169日から216日まで  7日  8日  9日 10日 11日 12日 12日 13日 14日 15日
3日 121日から168日まで  5日  6日  6日  7日  8日  9日  9日 10日 10日 11日
2日 73日から120日まで  3日  4日  4日  5日  5日  6日  6日  6日  7日  7日
1日 48日から72日まで  1日  2日  2日  2日  2日  3日  3日  3日  3日  3日






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平成12年度


1 一般の労働者に対する付与日数(平成12年度)



継続勤務期間

6箇月 1年6箇月 2年6箇月 3年6箇月 4年6箇月 5年6箇月 6年6箇月 7年6箇月 8年6箇月 9年6箇月以上
付与日数

10

11

12

14

16

17

18

19

20

20




2.所定労働日数の少ない労働者に対する比例付与日数(平成12年度)



週所定労働日数 1年間の所定労働日数

雇入れの日から起算した継続勤務期間

6箇月 1年6箇月 2年6箇月 3年6箇月 4年6箇月 5年6箇月 6年6箇月 7年6箇月 8年6箇月以上
4日 169日から216日まで  7日  8日  9日 10日 12日 12日 13日 14日 15日
3日 121日から168日まで  5日  6日  6日  7日  9日  9日 10日 10日 11日
2日 73日から120日まで  3日  4日  4日  5日  6日  6日  6日  7日  7日
1日 48日から72日まで  1日  2日  2日  2日  3日  3日  3日  3日  3日






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平成13年度以降



1 一般の労働者に対する付与日数(平成13年度以降)

継続勤務期間

6箇月 1年6箇月 2年6箇月 3年6箇月 4年6箇月 5年6箇月 6年6箇月 7年6箇月 8年6箇月 9年6箇月以上
付与日数

10

11

12

14

16

18

20

20

20

20




2.所定労働日数の少ない労働者に対する比例付与日数(平成13年度以降)



週所定労働日数 1年間の所定労働日数

雇入れの日から起算した継続勤務期間

6箇月 1年6箇月 2年6箇月 3年6箇月 4年6箇月 5年6箇月 6年6箇月以上
4日 169日から216日まで  7日  8日  9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日から168日まで  5日  6日  6日    9日 10日 11日
2日 73日から120日まで  3日  4日  4日  5日  6日  6日  7日
1日 48日から72日まで  1日  2日  2日  2日  3日  3日  3日

比例付与日数の算出の仕方

現在、通常労働者の1週所定労働日数は5.2日とされている。(労基法施行規則24条の3)
これから比例付与日数を算出する場合、次のように行う。

週所定労働日数4日の労働者の勤続年数が6カ月の場合は
   10日×4/5.2
勤続年数が1年6カ月の場合は
   11日×4/5.2のように計算します。(端数切り捨て。)









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Q&Aでおさらい

Q:今回の年次有給休暇に関する改正では、前年の出勤率8割以上の要件はそのままと理解してよろしいですか

A:そのとおり。今回改正は付与日数の増加テンポを早くする(3年6ヶ月経過時点から2日ずつ増加させ、6年6ヶ月経過で年間20日間に達するように変更)点についてのみです。従って、継続勤務・出勤率の要件、労働者の指定日付与の原則と使用者の時季変更権、計画的付与制度などについての変更はありません。


Q:パートタイマー等の所定労働日数の少ない労働者に年休比例付与表を適用する際、注意することがありますか

A:上記の「所定労働日数の少ない労働者に対する比例付与表」は、1週の所定労働日数が4日以下(又は年間216日以下)の労働者に適用されますが、その場合であっても、週の所定労働時間が30時間以上の者には適用されず、一般労働者の基準で付与しなければならないとされていますので、注意が必要です。
  また、毎日の契約労働時間が2時間であっても、週5日契約のパートタイム労働者には、一般労働者の基準で年休を付与しなければいけません。(この点は、付与日数が多いだけで、保障すべき年休手当額は2時間相当分ですから、特に矛盾は生じません。)