ビル解体工事〜通行人を巻き込む重大事故が連続発生!
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ビル解体工事
静岡県富士市(H15.3)
宮城県仙台市(H15.3)
東京都新宿区(H15.6)

通行人を巻き込む重大事故が連続発生!




ここでは、信号待ちの乗用車2 台が下敷きとなり、自動車内で2 名死亡、2 名負傷及び、工事作業員2 名が死亡した「静岡県富士市のビル解体工事の概要と事故防止対策として国土交通省がまとめた「建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン」を紹介する。






静岡県富士市ビル解体工事に係る事故の概要 〔関連〕


1.事故建物

 (1)所在地静岡県富士市吉原2丁目101 番1
 (2)建物概況
  @ 階数:地下1 階、地上7 階建て陸屋根
  A 構造:地下部分、1〜3階部分及び4階部分の一部RC 造4階(一部を除く)〜7階部分S 造
  B 建築経緯:当初昭和43 年(RC 造部分)増築昭和48 年(S 造部分)

2.事故発生日

 平成15 年3 月13 日

3.死傷者

 @ 死者4 名(男3 名、女1 名)
 A 負傷者2 名(男1 名、女1 名)

5.事故状況

 ・当該建物解体工事中、5 階部分で最後に残っていた建物南側部分(縦3m×横15m)が道路側(県道吉原停車場、吉原線)に崩落。
 ・崩落部分は、当初建築部分(RC 造でつくられた4 階の一部)と、増築部分の境にあたる5 階部分の外壁と柱、その柱が支えていた6 階の床及び梁が何らかの理由で崩落した模様。
 ・崩落当時、県道上において信号待ちの乗用車2 台が下敷きとなる。うち、自動車内で2 名死亡、2 名負傷。工事作業員2 名死亡

6.再発防止対策

  国土交通省が、公衆災害防止の観点から再発防止対策にかかるガイドラインを取りまとめているので、以下、参考掲載する。
  なお、ガイドラインとは別に、以下の報告書には、わが国における解体工事の実施状況に関するとりまとめが行われており、参考になる。


リンク 建築物の解体工事における外壁の崩落等による事故防止対策について(国土交通省・「建築物の解体工事の事故防止対策に関する検討会」報告書


(上記報告書のうち、「解体工事の実施状況」部分のポイント抜粋)



 ★H13年に、約35,000棟の解体工事があった。
 ★富士市の事故の後の緊急調査によると、5階建て以上かつ敷地境界、道路境界から5M以内で行われている解体工事は、H15.3.31時点で、全国に42件あった。大都市に集中している。
 ★解体工事を行いうる業者は、現在約10,000社にのぼる。新規参入業者の増加等経験に乏しい業者が増えてきている。また、解体工事に使用されるブレーカー等は近年、大型・強力なものが増えている。
 ★解体工事は、外壁を最後に残し内側から解体する工法が推奨されているが、外周部が外側に張り出して重心が外側にかかっているケースや、構造的に自立しないカーテンウオール等が用いられているケースが多いことから、外壁が外側に崩落しないようその構造的な安定に十分考慮する必要がある。
 ★建築物の最終の状態を示す「竣工図」が保存されていると安全上有効であるが、設計図書等はあっても竣工図が保存されているケースは少ない。また、増改築の記録はほとんど保存されていない。(前記42件の工事へのヒヤリングの結果)
 ★解体工事による事故は、H10年〜H12年の3年間で死亡者が77名。うち、外壁等の崩壊・倒壊によるものは、21%。但し、公衆災害に至ったケースは多くはない。

 その他詳細は、上記「報告書」を参照してください。







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ガイドライン


建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン (H15.7.3国総第103号、国住防第3号)


 建築物の解体工事にあたっては、事故防止(特に外壁等の崩落による公衆災害の防止)を図るため関係する法令、指針等の遵守を徹底するほか、特に以下に留意しなければならない。



(事前情報の提供・収集と調査の実施による施工計画の作成)


発注者及び施工者は、解体対象建築物の構造等を事前に調査、把握するとともに、事故防止に十分配慮した解体工法の選択、施工計画の作成を行うこと。

・発注者は、解体対象建築物の設計図書(構造図、構造計算書、設備図を含む。)、増改築記録、メンテナンスや点検の記録等(以下「設計図書等」という。)の情報を可能な限り施工者に提供すること。提供できる情報が少ない場合は、事前に必要な調査を行うこと。
・発注者及び施工者は、解体工事の契約にあたっては、余裕のある工期や適正なコストを設定すること。
・施工者は、提示された設計図書等を十分把握するとともに、実況が設計図書等と異なることを想定し、各構造部分等の十分な目視確認などの調査を行うこと。また、施工者は、大スパン等の特殊な構造の建築物の解体にあたっては、必要に応じて構造の専門家と十分に相談する等、安全性を考慮した工法の選択、施工計画の作成を行うこと。

 

(想定外の状況への対応と技術者等の適正な配置)

施工者は、解体工事途中段階で想定外の構造、設備等が判明した際は、工事を一時停止し施工計画の修正を検討すること。

・施工者は、解体工事において、内装材、設備配管、構造材等の撤去中に、想定外の構造形式により建築されていることが判明したり、鉄骨の腐食、溶接不良等、施工計画において想定していなかった状況が判明した場合は、工事を一時中断し、必要な調査等を行い、それを踏まえた工法の変更や安全措置の追加等、施工計画の修正の検討を行うこと。
・施工者は、技術者等の選任にあたっては、解体工事の知識、経験の十分な者を選任する等、体制の整備を図ること。
・施工計画の修正の検討にあたっては、その内容、工期等について、発注者、元請の建設業者、解体工事業者等との間で、十分な協議を行うこと。

 

(建築物外周の張り出し部、カーテンウォール等の外壁への配慮)

施工者は、公衆災害を防止する観点から、特に、@建築物の外周部が張り出している構造の建築物、Aカーテンウォール等、外壁が構造的に自立していない工法の建築物の解体工事の施工にあたっては、工事の各段階において構造的な安定性を保つよう、工法の選択、施工計画の作成、工事の実施を適切に行うこと。

・施工者は、建築物外周の張り出し部、外壁等が外側に倒壊、落下すれば、重大な公衆災害を引き起こす可能性が高いことを十分認識し、適切な工法、手順を採用する等必要な対策を講ずること。
・施工者は、張り出し部分は、原則としてそれを支持する構造体が安定している段階で撤去するか、構造体の重心が外側にかからないよう適切に支持する等の配慮をすること。
・施工者は、外壁の転倒工法等を用いる場合、同時に解体する部分の一体性を確保するとともに、過度な力を加えず内側に安全に転倒させること。
・施工者は、プレキャスト板等のカーテンウォールは、それ自体で自立しないことを十分認識し、落下、転倒等を防止するような支持の方法について十分な配慮を行うこと。

(増改築部等への配慮)

施工者は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造等の異なる構造の接合部、増改築部分と従前部分の接合部等の解体については、特に接合部の強度等に十分配慮して、施工計画の作成、工事の実施を行うこと。

・増改築部分と従前部分の接合部は、エキスパンションジョイントやあと施工のアンカー等、増改築特有の構造となっていること、また、小規模な建築物、や古い建築物の場合は、設計図書等(特に、構造図、増改築記録)が残されていないことが多いこと等から、施工者は、異なる構造の接合部等について特に、十分な目視確認等による調査を行い、慎重に施工計画を作成すること。

 

(大規模な建築物への配慮)

発注者及び施工者は、大規模な建築物の解体工事における事故の影響、責任、解体工事に係る技術の必要性等を十分認識し、関係法令を遵守するとともに、適切な契約、施工計画の作成、工事の実施を行うこと。

・発注者及び施工者は、大規模な建築物の解体工事は、新築時と同様に、十分な調査を行うとともに、設計図書等に基づく施工計画、施工管理等が必要であることを認識すること。
・発注者及び施工者は、事故が生じた場合の被害の甚大さや、過失責任を十分認識すること。

 

(建築物の設計図書等の保存)

建築物の所有者及び管理者は、新築時及び増改築時の設計図書等や竣工図の保存、継承に努めること。

・建築物の設計図書等の情報は、建築物の適正な維持保全に必要であるとともに、解体時における安全性の検討にとっても重要であることから、建築物の所有者及び管理者は、新築時及び増改築時の設計図書等(特に構造図、増改築記録)や竣工図の保存に努め、建築物の譲渡、売買等に際しても、その継承に努めること。