「新・労働基準法」の実務解説
 
7−2.育児・介護労働者の時間外労働の制限の制度

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実務解説シリーズ
文責は労務安全情報センターにあります。(H14.2.25記)


育児・家族介護労働者の
時間外労働の制限の制度
 
H14.4.1施行
予備知識
この制度のあらまし
参考:一般労働者の時間外労働の制限(限度基準)
36協定の「起算日」と「制限開始日」を合わせることによる協定の限度時間の実務
H14.4.1から改正された36協定
(新様式はこうなる)
36協定の「起算日」と時間外労働の「制限開始日」の不揃いを調整した36協定の記載例



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予備知識


1.女性の時間外労働の制限は、平成10年の労働基準法改正(H11.4.1施行)によって廃止された。経過措置として、従来、時間外労働の制限による保護を受けていた女性労働者のうち、一定の育児・介護を行うものについて、3年間の激変緩和措置(平成14年3月31日までの措置)が講じられることとなった。

2.労働基準法に設けられた経過措置の期限が終了することに伴い、新たに、育児・介護休業法によってほぼ同様の制度(但し、男女共に取得が可能)が継続されることになったものである。

3.新たに、育児・介護休業法に規定された「時間外労働の制限の制度」は、請求により、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならないとした。(業種区分なく一律に)
 これは、労基法の経過措置(以下のとおり業種による3区分があった)とほぼ同様のものであるが、厳密には、商業サービス業関連業種において1か月ベースの制限が厳しくなっている。
 ○製造業、鉱業、建設業、運輸交通業、貨物取扱業等(1週6時間、1年150時間)
 ○保健衛生業、接客娯楽業(2週12時間、1年150時間)
 ○林業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、教育・研究業、清掃・と畜業等(4週36時間、1年150時間)

4.労働基準法の経過措置が終了することに伴い、36協定の様式変更が行われた。新様式は、H14.4.1から適用になります。

 ○36協定の様式変更のポイント
  36協定の延長限度時間に関する基準設定が、3欄(@一般労働者欄、A1年変形適用労働者欄、B育児・介護関連の特定労働者欄、の3区分)になっていたが、今回の改正で、Bが削除になった。
  とくに、旧様式そのまま使用して、うっかり、B育児・介護関連の特定労働者欄を記入(協定)している場合、労基署の窓口で受理されないおそれがあるので注意する。

 ○改正された36協定の様式はこうなる(参照してください。)




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改正育児・介護休業法に基づく時間外労働の制限について
平成14年4月1日から

制度のあらまし

時間外労働の制限の制度
1か月24時間、1年150時間まで

制度の概要は以下のとおりです。
 事業主は、
(1) 労働基準法第36条の規定により労働時間を延長することができる場合において、→36協定があることを前提とした制度です。
(2) 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
(3) 又は要介護状態の対象家族の介護を行う労働者が  →要介護状態とは対象家族とは
(3) 請求した場合においては、
(4) 事業の正常な運営を妨げる場合を除き、→注意点
(5) 1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働(法定時間外労働)をさせることができません。

 なお、日々雇い入れられる労働者は請求できませんが、期間を定めて雇用される者は請求できます。
 ただし、次のような労働者は請求できません。

 1.その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
 2.配偶者が常態としてその子を養育することができると認められる労働者(育児関係のみ)→どういう場合をいうのか
 3.1週間の所定(契約)労働日数が2日以下の労働者


 
※制度運用に当たり、事業主として講ずべき措置等


時間外労働の制限措置を受けたい場合は、どうすればいいのか 使用者に、請求します。
請求しない労働者には適用されません。
請求した場合どのように取り扱われるか 使用者は、1か月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせることができません。
(労働基準法の36協定の締結・届出がない場合、1か月24時間、1年150時間の時間外労働もさせることができません。)
どのようにして請求すればいいか ※「制限の開始日及び終了日」を明示して、1か月前までに請求します。
  (使用者の事情が許せば、1か月以内にしても問題ありません。)
※請求は書面でなければいけません。→請求書面に記載する事項はなにか
※開始日と終了日の期間は、1か月から1年以内の期間にします。(例、2週間とかは認められません。)
※この請求は何回でもできます。
※期間中であっても、いつでも請求の撤回はできます。(その日以降、時間外制限の適用が外れます。)



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「対象家族」の範囲は、

(1)配偶者、父母、子
及び
(2)同居し扶養している「祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母」
です。


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「事業の正常な運営を妨げる場合を除き」とは、

 事業主は、「労働者が請求どおりに時間外労働の制限を受けられるように、通常考えられる相当の努力をすべきものであり、単に、時間外労働が事業の運営上必要であるとの理由だけでは拒むことは許されない」とされています。



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「配偶者が常態としてその子を養育することができると認められる労働者」とは、

 (1) 職業に就いていないこと(育児休業その他の休業により就業していない場合及び1週間の所定(契約)労働日数が2日以下の場合を含む。)
 (2) 負傷、疾病等により子の養育が困難な常態でないこと
 (3) 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産の予定がなく、又は産後8週間以内でないこと
 (4) 請求にかかる子と同居していること
のいずれにも該当する者をいいます。
 ※ 要は、仕事に就いてなくて元気な配偶者が子供と同居しているなら、この制度を使うまでもないでしょう、という意味です。



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制度運用に当たり、事業主として講ずべき措置等

1.就業規則に、「育児・介護休業制度にかかる規定を設け、その中に、時間外労働の制限にかかる条項を入れること」
  (就業規則の必要記載事項であることから、その対応をしなければなりません。要:届出)

2.36協定の存在が前提
  一切の時間外労働を行わないとする事業場(この場合は、育児・介護労働者が時間外労働の制限の請求を行う必要がないことになるでしょう。)を除いて、労基法第36条第1項に基づく「時間外労働に関する協定届(36協定)」を締結し、所轄の労働基準監督署長に届出を済ませておくことが必要です。この36協定の締結・届出がない場合、1か月24時間、1年150時間の時間外労働もさせることができませんので、注意が必要です。



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請求書面に記載する事項はなにか

育児の場合
 (1) 請求年月日
 (2) 労働者の氏名
 (3) 請求に係る子の「氏名、生年月日、続柄」(子が出生していない場合は、出産予定者の氏名、出産予定日、続柄)
 (4) 制限の開始日及び終了日
 (5) 請求に係る子が養子である場合には養子縁組の効力発生日
 (6) 常態としてその子を養育することができる配偶者がいないこと

介護の場合
 (1) 請求年月日
 (2) 労働者の氏名
 (3) 請求に係る対象家族の「氏名、続柄」
 (4) 制限の開始日及び終了日
 (5) 請求に係る対象家族が祖父母、兄弟姉妹、孫である場合は、労働者がその対象家族と同居し、かつ、扶養していること
 (6) 請求に係る対象家族が要介護状態にあること






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36協定の限度時間の実務管理


1.36協定(時間外労働に関する協定)には、起算日を協定することが義務づけられています。
  例えば、1か月45時間(起算日=毎月1日)・・・暦合わせ、或いは、1か月45時間(起算日=毎月21日)・・賃金締め切り日が20日の場合、その翌日を起算日とする例などである。

2.ところが、育児・介護を行う労働者が時間外労働の制限の制度を利用する場合、ランダムに「制限開始日」を指定されると、使用者の労働時間の限度時間管理が非常に煩雑になるという問題があります。

3.予め話し合って(強制はできないが、、)できるだけ、労働者の請求する「制限開始日」を36協定の毎月の「起算日」(例:毎月1日等)に合わせるような仕組みにするのがよいでしょう。
  (具体的には、労働者の請求する「制限開始日」を、毎月1日等に統一するために、後にずらすか、前倒しすることになります。)
 この場合の36協定の記入例を下記に掲載しておきます。

参考
36協定の1か月の「起算日」と時間外労働の制限を請求した労働者の「制限開始日」の不揃いを調整した36協定の記載例





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一般労働者の時間外労働の制限
(限度基準)


1.法的根拠規定の新設

  労働大臣は「36協定の延長限度時間について基準を定める」とされ、平成10年12月28日労働省告示第154号が出されました。
  基準となる限度時間は、従前と変更がありませんが、大臣告示の性格が変わっていることに注意する必要があります。即ち、従前は「指針:目安時間であり労使が考慮すべきもの」でしたが、今後は「基準:限度時間であり労使が遵守すべきもの」になったことです。
  なお、対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制を適用する労働者には、次表右欄の基準が適用されます。

新・36協定の延長限度時間(告示154号)
一定期間 限度時間(H10告示) 1年単位の変形労働時間制の限度時間(H10告示)
1週間  15時間  14時間
2週間  27時間  25時間
4週間  43時間  40時間
1か月  45時間  42時間
2か月  81時間  75時間
3か月 120時間 110時間
1年間 360時間 320時間
なお、基準の詳細は以下のリンク先を参照してください。
■36協定の延長限度時間に関する労働省告示第154号

2.使用者及び労働者の過半数を代表する者等は、36協定の内容が基準に適合したものとなるようにしなければならない。

3.監督署長は使用者や労働者の過半数代表者に対し必要な助言及び指導を行うことが出来る。

 注意
 ・36協定は労働基準監督署長に届出し受理されたした段階で効力が発生します。
  (労使協定には、届出が効力発生要件になっているものと、単に手続きに過ぎないものの2種類ありますので注意が必要です。)