労働衛生(対策)MEMO

■HOMEPAGE
■640/480   ■安全衛生管理





労働衛生(対策)memo


1.コンパクトさを旨とした「職場における労働衛生対策memo」。
2.指針・通達の番号や参考事項欄のリンクの設定ができていません。順次、対応を図ります。
3.A4印刷にして10頁以内にまとめようとしたため、説明が十分でない箇所もあろうかと思いますが、例えば、はじめて安全衛生担当部署に配属になったスタッフの方が、職場における労働衛生の基本対策を確認しておきたい、といった場合などに利用できるかと思います。なお、編集に当たっては、労働省労働基準局編「平成12年度労働衛生のしおり」その他の図書を参照させていただきました。

労務安全情報センター



sakuin

1 職場で行う労働衛生の基本対策
2 快適な職場環境を実現するために
3 健康確保対策
4 職場におけるメンタルヘルス対策
5 職場における化学物質の管理
6 粉じん障害の防止対策
7 騒音障害の防止対策
8 電離放射線障害の防止対策
9 振動障害の防止対策
10 職場における腰痛予防対策
11 熱中症の予防対策
12 作業環境の評価に基づく作業環境管理
13 職場における喫煙対策
14 労働衛生保護具 







1 職場で行う労働衛生の基本対策


1 労働衛生管理体制を整備します。

  総括安全衛生管理者、産業医、衛生管理者、安全衛生推進者等の労働衛生管理に携わる管理者の選任を行い、業種・規模に応じて労働衛生委員会を設置するなど、職場における「労働衛生管理体制」を確立、整備します。(労働安全衛生法第3章「安全衛生管理体制」)

2 労働衛生管理の基本は「作業環境管理、作業管理、健康管理」の3管理を適切に行うことが中心となります。
作業環境管理 目的:作業環境中の種々の有害要因を取り除いて適正な作業環境を確保することを目的とします。

@まず、作業環境測定を的確に行いその結果を適正に評価します(現状把握)。その結果を踏まえて、局排装置や各種設備の改善・整備に取り組みます。
A設備の作業前および定期点検も作業環境の維持のために大切です。
作業管理 目的:有害要因を適切に管理して、労働者への影響を少なくすることを目的とします。
例えば、次のようなとり組みを行います。

@作業に伴う有害要因の発生を防止したり、ばく露を少なくするために作業の手順や方法を定める。
A作業方法の変更などにより作業負荷や姿勢などによる身体への悪影響を減少させる。
B保護具を適正に使用して、ばく露を少なくする。
健康管理 目的:健康診断や健康測定を通じて労働者の健康状態を把握し、作業環境や作業との関連を検討することにより、労働者の健康障害を未然に防止したり、さらには、健康の保持増進につなげることを目的とします。

3 職場において、労働衛生対策を実効あるものに、また、それを定着させていくためには、労働者に対する労働衛生教育への適切な取組が重要です。 


(参)
1 労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(H11・4・30労働省告示第53号)
2 
労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針(H元.5.22公示第1号、改正H6.7.6公示第4号)
3 衛生管理者能力向上教育について(H6・2・17基発第82号)






2 快適な職場環境を実現するために

 「仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくり」に挑戦してみよう。
 ちょっとした、工夫で見違えるような改善効果を生むことだってある。
 なにより、快適な職場環境の実現は、気持ちよく仕事ができるための必須条件であるばかりか、能率の低下を防ぎ生産性を向上させることができるから、ちゃんと説得すれば、経営者も”総論”では、理解を示すものだ。あとは、費用対効果を織り込んだ”具体策”次第だ。

能率の低下
(生産性の低下)

何だこのモヤのようなものは。えっ、粉じんかょぉ。
なにか臭うなぁ、気になって仕方ない
工場には空調を入れる訳にいかないと言われているけど、、それにしても、暑いなぁ。
寒い!あの破れガラス塞いでほしいょ。
ちょっとこの事務所、蛍光灯が足りないのと違うか。どうも暗くて気分も沈む
コピー機や印刷機は別室にしてくれないかなぁ。どうも騒音が気になって集中できないよ。
中腰の姿勢はつらい、改善してほしいょ。(不自然な姿勢での作業)
おぃおぃ、これを人手で運ぶのかい?(ある集荷場で)
昼休みにキャッチボールをしたら汗まるけ、シャワーほしいな。
昼食後に、イスでぼんやり、、どうせなら、横になりたいのに(小さい休養室はいつも一杯)


ステップ1

・「快適でない」環境が、チェックして見たら労働安全衛生法令違反だったいうことはないか。まず、このチェックを完璧にやってみよう。
・安全衛生規則違反があるようでは、話にならない(快適環境の追求とあわせて、職場の環境が法令の最低基準をクリアしているかの点検は必ず実施しよう。)

ステップ2

いよいよ「快適職場づくり」への挑戦だ。

@快適職場推進計画をつくろう
 ・作業環境などの現状を的確に把握し、職場の意見要望を聞いて快適職場形成の目標を掲げます。
 ・目標には優先順位をつけましょう。
A計画作成に当たっては、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(労働安全衛生法第71条の3に基づく労働大臣の指針)も参考にしよう。
B作成した「快適職場推進計画」について、都道府県労働局長から認定を受けたり、中小企業である場合、職場改善機器の助成金をうける道もあるから検討してみよう。

参考
労働安全衛生法第7章の2 快適な職場環境の形成のための措置
労働安全衛生法第71条の2
事業者は、事業場における安全衛生水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。
一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

同法第71条の3
労働大臣は、前条の事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
2 労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導等を行うことができる。
 
(参)
1 事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針について(H4・7・1労働省告示第59号)
2 
一覧表で見る事務所衛生基準規則
3 
VDT作業のための労働衛生上の指針について(S60・12・20基発第705号)






3 健康確保対策


(1)健康診断

 労働安全衛生法では、事業者の責務として「一般健康診断」(雇入れ時健康診断=安衛則第43条と定期健康診断=安衛則第44条があります。)および「特殊健康診断」(安則第13条に規定された14の有害業務に従事する労働者に対する6か月に1回の健康診断です。)の実施が義務づけられています。
 また、一定の有害業務に従事する労働者に対する実施が指導勧奨されている「指導勧奨・健康診断」があります。


(2)健康診断の事後措置

 健康管理の推進のためには、健康診断の結果に基づく保健指導や事後措置の実施が必要です。
 ・健康診断の結果を本人に通知します。
 ・異常所見ありの診断を受けた労働者には、必要な措置について3か月以内に医師の意見を聞いてその意見内容を健康診断個人票に記載します。
 ・医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは、労働者本人の実情も考慮して「就業場所の変更、作業転換、労働時間の短縮、深夜業の回数減、昼勤務への転換等」の措置を講じます。
 ・特に健康保持に努める必要があると認める労働者に対しては、医師、保健婦等による保健指導を行うよう努めます。

 その他詳細は、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(H8.101,改正H12.3.31)を参照しながら、必要な措置を講じます。


(3)健康の保持増進に向けて

 健康確保対策を進める上で、考えなければならないのは、@職場における高年齢労働者の増加とA生活様式の変化により心疾患、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病を持つ労働者の割合が高くなっていることです。
 高齢化に伴う身体機能の低下や疾病は、適度な運動、適切な食生活、十分な睡眠と休養、ストレスのコントロール等によってかなり予防することができます。このことについて、事業者は労働者の自覚を高めるための働きかけを行うべきでしょう。
 一方、職場には労働者自身の力では取り除くことのできない健康障害要因やストレス要因も存在します。
 以上の諸事情を踏まえて、事業者の行うトータルな健康の保持増進に向けた取り組みが求められています。

 ・健康の保持増進対策をすすめるに当たっては、THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)も参考にするといいでしょう。
 ・THPでは、
  健康保持増進対策の体制として、次のようなスタッフの養成を求めています。
  @産業医A運動指導担当者B運動実践担当者C心理相談担当者D産業栄養指導担当者E産業保健指導担当者

  企業では、@健康測定A運動指導BメンタルヘルスC栄養指導D保健指導、の実施を推進します。この推進には事業場内にスタッフを配置してチームとして実施していくことが基本ですが、「健康保持増進サービス機関」として認定を受けた外部機関を利用することも可能です。


(参)
1 事業場における労働者の健康保持増進のための指針(S63・9・1公示第1号、H9・2・3公示第2号)
2 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(H8・10・1指針第1号、改正H12・3・31指針第2号)
3 健康診断の項目について
  ・一般健康診断−雇い入れ時、定期健康診断(安衛則43、44)
  ・6か月に1回ごとの定期健康診断が必要な業務(安衛則45)
  ・海外派遣労働者の健康診断(安衛則45の2)
  ・給食従事者の検便(安衛則47)
  ・自発的健康診断(安衛則66の2)
  ・特殊健康診断(法令規則によるもの−じん肺法、高気圧則、電離則、鉛則、四アルキル則、有機則、特化則、及び歯科検診を要する業務)
  ・通達で健康診断の実施を推奨されている業務−30業務






4 職場におけるメンタルヘルス対策

 
 職場生活において強い不安やストレスを感じる労働者が増加しています。これからは、事業場において、メンタルヘルス対策への取り組みが欠かせないものになるでしょう。
 メンタルヘルス対策に関して、労働省から、その原則的な実施方法を示した「事業場における心の健康づくりのための指針」が公表されています。
 事業場では、この指針を参考に当面の対策を推進することになります。

 指針の骨子は、

 (1)セルフケア(労働者が自ら行うストレスへの気づきと対処)
   ・労働者に対する正しい知識の付与
   ・事業場内外での、労働者の自主的な相談に応じられる体制の整備

 (2)ラインによるケア(管理監督者が行う職場環境等の改善と相談への対応等)
   ・職場環境等の改善及び個々の労働者に過度な長時間労働、過重な疲労、心理的負荷等が生じないようにする等の配慮
   ・管理監督者に対する正しい知識の付与
   ・管理監督者による心の健康問題を持つ労働者、長時間労働等により過労状態にある労働者等からの相談への対応

 (3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア(産業医、衛生管理者等の事業場内産業保健スタッフ等による専門的ケア)
   ・スタッフ等に対する正しい知識の付与 
   ・スタッフ等による労働者や管理監督者に対する支援
   ・スタッフ等による専門的立場からの事業場内の問題点の把握と改善
   ・スタッフ等による相談及び職場復帰、職場適応等の指導


 (4)事業場外資源によるケア(産業保健推進センター等の事業場外の機関や専門家によるケア)
   ・事業場外の専門機関等とのネットワークの構築
   ・その他の連携



(参)
1 事業場における労働者の心の健康づくりのための指針(H12・8・9基発第522の2)






5 職場における化学物質の管理


(1)職場における化学物質のばく露の経路


  職場において化学物質にばく露される経路は、大きく次のとおりである。
   ・作業環境中のガス、蒸気、粉じんを吸入する経気道ばく露
   ・皮膚に接触することにより吸収される経皮ばく露
   ・有害物に汚染されたものを食べるなどの経口ばく露


(2)化学物質の有害性調査

 イ 化学物質の有害性の調査
  ・新規化学物質の有害性調査
    新規化学物質を製造又は輸入する事業者には、変異原性試験又はがん原性試験の実施と大臣への届出が義務付けられています。
  ・既存化学物質の有害性調査については事業者に努力義務が課されています。

 ロ 化学物質等の危険有害性表示制度

  つぎの対策を講ずることとされています。
  ・労働安全衛生法57条に基づく(政令指定の91物質)成分、取扱上の注意等の表示
  ・労働安全衛生法56条の対象物質7又は同施行令18条の2に定める631物質を含有する物を譲渡・提供する者は「化学物質等安全データーシート(MSDS)」の交付が義務化されました。(平成12年4月から)
  なお、すべての危険有害な化学物質等を対象とした「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」に基づく指導も行われています。
   指針では、危険有害化学物質等においては「化学物質等安全データーシート(MSDS)」の交付及び容器又は包装への危険有害性の種類等の記載と求め、それ以外の化学物質等においては、容器又は包装への名称の記載が求められています。

 ハ 化学物質の「製造等禁止物質」、「許可物質」、「管理物質」による規制

   現在、化学物質は
   ・製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されている「製造等禁止物質」(ベンジジン等)
   ・製造に際し労働大臣の許可を受ける必要のある「許可物質」(ジクロルベンジジン、PCB等)
   ・その他製造・取扱上の管理が必要な「管理物質」
   に応じた規制が行われています。許可及び管理を要する化学物質については、それぞれの物質の有害性、使用状況にあわせて密閉設備、局排装置の設置、保護具の使用、健康診断の実施、有害性の表示等講ずべき措置が定められているので、これらを順守し適切な管理を行う必要があります。

   また、化学物質の適正な管理を行うためには、作業マニュアルの作成、「保管・運搬・廃棄」に関する基準策定、作業主任者の選任等安全衛生管理体制の確立、適切な作業者教育の実施を進めることが必要です。


(参)
1 化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針(H12・3・31公示第1号)
2 労働安全衛生法第28条第3項に基づく健康障害を防止するための指針
  「四塩化炭素による健康障害防止指針」(H3・8・26公示第1号)
  「1.4−ジオキサンによる健康障害防止指針」(H4・12・21公示第2号)
  
「1.2−ジクロルエタンによる健康障害防止指針」(H5・6・25公示第3号)
  
「バラ−ニトロクロルベンゼンによる健康障害防止指針」(H6・3・25公示第4号)
  
「クロロホルムによる健康障害防止指針」(H7・9・22公示第5号)
  
「テトラクロルエタンによる健康障害防止指針」(H7・9・22公示第6号)
  
「酢酸ビニルによる健康障害防止指針」(H9・2・6公示第7号)
  
「1.1.1−トリクロルエタンによる健康障害防止指針」(H9・2・6公示第8号)
  
「パラ−ジクロルベンゼンによる健康障害防止指針」(H9・2・6公示第9号)
  
「ビフェニルによる健康障害防止指針」(H9・2・6公示第10号)
3 変異原性が認められた化学物質一覧
4 化学物質等の危険有害性等の表示制度に関する指針(H4・7・1告示第60号)




(3)有機溶剤中毒の予防対策

 有機溶剤は、
 他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称。常温では液体。揮発性が強いため蒸気の呼吸器吸収や、油をとかす性質があることから皮膚吸収にも注意する必要があります。
 最近の中毒事故例の多くは、通気の不十分な場所での有機溶剤の取扱に伴って発生しています。
 現在、「有機溶剤中毒予防規則」で規制されている物質は54種類、有害性の程度により「第1種、第2種、第3種」に分類され、それぞれに応じ事業者に対して、以下の中毒予防措置を講じることを求めています。

 (予防措置の概要)

 ・発散源の密閉設備又は局排装置の設置・作業主任者の選任・装置の定期自主検査・作業環境測定・健康診断・保護具の使用・貯蔵、処理など。


(参)
1 一覧表で見る有機溶剤中毒予防規則
2 
建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドライン(通達H9・3・25基発第197号)



(4)特定化学物質等による障害の防止対策

 特定化学物質は、
 職業がん、皮膚炎、神経障害などを発生させるおそれのある化学物質として、「特定化学物質等障害予防規則」で規制されている52種類の化学物質で、以下の3つの分類により健康障害の防止措置を求めています。

 第1類物質(製造許可を必要とする物質。製造設備の密閉化や作業規程の作成などの対策が条件とされている
 第2類物質(製造もしくは取扱設備の密閉化又は局排装置等の設置を必要とする物質)
 第3類物質(大量漏洩の事故防止措置を必要とする物質)

 なお、対策は、労働者の化学物質への「ばく露の防止」が基本であり、そのための種々の対策を講じます。
 また、「漏洩防止」では、バルブ、コックの誤操作防止対策が重要です。
 さらには、発がん性のある化学物質は、「特別管理物質」として特別の管理が必要ですが、最近では、特別管理物質である「石綿」を使用した建築物の解体作業における石綿粉じんへの曝露が問題となっています。
 第3類物質に指定されている「一酸化炭素」による中毒(自然換気の不十分な場所でのガソリンエンジン等の内燃機関や火気の使用による中毒事例が多い。)が多く発生しているので、注意を要します。


(参)
1 一覧表で見る特定化学物質等障害予防規則
2 ガラス繊維及びロックウールの労働衛生に関する指針について(H5・1・1基発第1号)
3 建設業における一酸化炭素中毒予防のためのガイドラインの策定について(H10・6・1基発第329号)



(5)鉛および四アルキル鉛による障害の予防対策

 鉛および四アルキル鉛による健康障害予防対策は、それぞれ、「鉛中毒予防規則」、「四アルキル鉛中毒予防規則」に規定されているところにより適切な管理を行うことが必要です。


(参)
1 一覧表で見る鉛中毒予防規則
2 一覧表で見る四アルキル鉛中毒予防規則






6 粉じん障害の防止対策


 粉じん障害防止対策は
 「粉じんの発散とばく露の低減対策」、「従事者の健康管理」が中心となります。

(1)粉じんの発散とばく露の低減対策

 イ 粉じん発散源に対する対策を徹底します。
  ・粉じん発生の少ない生産工程、作業方法への改善の可能性を絶えず検討します。原材料の見直しを含めた総合的な検討が重要です。
  ・発散源対策では、「密閉化」、「局排装置」、「プッシュプル型換気装置」、「湿式化」等が検討課題となります。
 ロ 作業環境測定とその評価に基づく事後対策の実施
 ハ 呼吸用保護具の使用
 ニ 粉じん作業従事者に対する特別教育等の実施
 ホ 局排装置等の定期検査(点検)
 ヘ たい積粉じんによる2次的発散防止を図るための清掃(毎日および定期に)
 ト 労働者の休憩設備を、粉じん作業場以外の場所に設置します


(2)従事者の健康管理

 じん肺健康診断の実施
 ・じん肺法に規定されているじん肺健康診断には、つぎの4種があります。
  「就業時検診」、「定期検診」、「定期外検診」、「離職時検診」
 ・定期じん肺健康診断は、常時粉じん作業に従事している者には原則として3年ごとに1回。ただし、管理区分2および3の者は1年以内ごとに1回の実施が必要です。
 ・事業者はX線フィルムおよびじん肺検診の結果記録を7年間保存する義務があることにも注意します。
 ・じん肺管理区分の申請は、X線写真等を添付して地方労働局長に対して行います。管理区分が3と認められた者には、「健康管理手帳」が交付され、年1回、国が健康診断の受診機会を供与しています。


(参)
1 一覧表で見る粉じん障害防止規則
2 第5次粉じん障害防止総合対策の推進について(H10・3・31基発第147号の2)






7 騒音障害の防止対策

 「騒音障害防止のためのガイドライン」(平成4年10月)などを参照し、職場における適切な騒音障害の防止対策を講ずることとします。

 ガイドラインでは、
 労働安全衛生規則第588条に定める8つの屋内作業場(騒音の測定が義務づけられている作業場)及び、騒音レベルが高いとされる52作業場を対象に、作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育等について規定しています。
 主な内容は次のとおりです。
 ・屋内作業場では、6月以内ごとに1回の等価騒音レベルの測定を行う。(設備変更の際は、その都度)
 ・測定結果にもとづいて作業場を、「第T管理区分」、「第U管理区分」、「第V管理区分」に区分してそれぞれに応じて、騒音レベルの低減化を図る。
 ・健康診断は、雇入時および定期に実施する。
 ・その他

(参)
1 騒音障害防止のためのガイドライン(H4.10.1基発第546号)






8 電離放射線障害の防止対策

 電離放射線は
 溶接部等の非破壊検査、物の厚さの測定などや医療、研究等のさまざまな分野で利用されています。
 電離放射線による障害を防止するためには、以下のような対策を講ずる必要があります。

(1)外部被ばくの防護

 ・放射線源の隔離(区画された専用場所に設置し、管理区域、立入禁止区域の設定する。取扱は遠隔操作又は専用器具を使用する。)
 ・遮へい(含鉛手袋、鉛エプロン、防護眼鏡等の着用。放射線源と作業者の間に遮へい壁等を設ける。)
 ・作業管理(作業主任者の選任および作業計画−作業方法、作業時間などに関するもの−の樹立)

(2)内部被ばくの防護

 非密封線源の取扱では、
 ・非密封の放射性物質は、管理区域内に設けた放射性物質取扱作業室で行います。
 ・放射性物質のガス、蒸気、粉じんの発散源は、密閉設備又は局排装置で空気中の放射性物質の濃度を一定限度以下に抑えるとともに、定期的に作業環境測定を行ないこれを確認します。
 ・設備機器等の表面汚染についても定期検査および測定を実施し、とくに、放射性物質取扱作業室から物品を持ち出す際は必ず汚染状況を検査しなければなりません。
 ・放射性廃棄物の処理、貯蔵、保管、廃棄等に当たっては、適切な容器、設備を用いるよう配意します。
 ・放射性物質取扱作業室には、専用の作業衣を備え、汚染危険の高い作業では、保護衣類、手袋、履物、呼吸用保護具を使用します。
外部被ばくと内部被ばく

 X線装置、荷電粒子加速装置、放射性物質装備機器、放射性物質の取扱作業では、これらから照射された放射線を体の外から受けるので、これを「外部被ばく」といいます。
 非密封の放射性物質を取り扱う作業では、放射制物質の飛沫等が空気中に広がったり、身体、衣服、設備機器等の表面に付着したりして汚染が生じますが、汚染が生じると、作業者の呼吸や皮膚の傷口等から放射性物質が体内に入ることがあり、その結果、体内で被ばくすることになります。この被ばくのことを「内部被ばく」といいます。


(3)被ばく管理

 ・管理区域に立ち入る際は、フィルムバッジ、熱ルミネンス線量計、ポケット線量計等によって(線量計の着用はフィルムバッジのように一定期間の線量当量を測定するものとポケット線量計のように毎日の読みとりが可能なものを併用することが望ましい。)線量当量を測定し、法令で定められた限度を超えないように管理します。


(4)核燃料加工施設、原子力発電所における管理

 ・平成12年1月30日より、一定の原子力施設で核燃料物質等を取り扱う業務では、作業規程の作成と特別教育の実施が義務化されています。


(5)健康管理と安全衛生教育

 ・雇入れ、配置換えの際および6月以内ごとに1回(一部の項目は3月以内ごとに1回)、定期に健康診断を行うことが必要です。
 ・X線装置又はガンマ線照射装置を用いて透過写真撮影業務を行う労働者、および一定の原子力施設で核燃料物質等を取り扱う業務従事者には、電離放射線障害防止規則で定められた科目の特別教育を実施することが必要です。


(参)
1 一覧表で見る電離放射線障害防止規則






9 振動障害の防止対策

 振動工具の種類には、
 (1)さく岩機、ピッチングハンマー等のピストンによる打撃機構を有する工具
 (2)チェンソー、芝刈り機等の内燃機関を内蔵する工具
 (3)タイタンパー等の振動体内蔵工具
 (4)電機ディスクグラインダー、スイング研削盤等の回転工具
 等があります。


 対策

 ・振動工具は、できるだけ振動レベルの小さいものを採用するようにします。振動工具は整備不良や経年劣化によって振動が増加する傾向がありますので点検整備に留意することが必要です。
 ・振動ばく露時間の管理
  振動ばく露時間をできるだけ少なくするために、操作時間の厳守、適当な休憩、他の作業との組み合わせ等の適切な作業計画にもとづいた作業を行うほか、防振保護具や防音保護具の使用を徹底することも必要です。
 ・作業環境面では、寒冷の影響を少なくするようにします。(休憩設備、暖房設備、防寒具)
 ・定期的な健康診断を実施します。
 ・振動業務に従事させる際には、必要な安全衛生教育を行います。
 ・労働省が推進している振動障害防止対策は「振動障害総合対策要綱」(平成5年)に示されているので参照しながら、対策を推進します。


(参)
1 振動障害総合対策要綱(H5・3・31基発第203号)
2 チェンソー取扱業務の健康管理指針(S50・10・20基発第610号)
3 チェンソー以外の振動工具の取扱業務の振動障害予防対策指針(S50・10・20基発第608号)






10 職場のおける腰痛予防対策

 「職場における腰痛予防対策指針」(平成6年・労働省)に基づく、対策の推進を図ります。

 作業管理に関して留意点

 ・腰部に過度の負担がかかる作業は、自動化、省力化によって労働者の負担の軽減を図るための取組が原則となるべきです。
 ・その上で、腰部に負担のかかる中腰、ひねり、前屈、後屈ねん転等の不自然な姿勢、急激な動作をなるべく取らないようにします。
 ・腰部に負担のかかる姿勢、動作を取る場合は、姿勢を整え、かつ、急激な動作を避けるようにします。

 指針では、次の5つの作業態様に係る基本対策を示しています。
(1)重量物取扱作業
(2)重症心身障害児施設等における介護作業
(3)腰部に過度の負担のかかる立ち作業
(4)腰部に過度の負担のかかる腰掛け作業・座作業
(5)長時間の車両運転等の作業


(参)
1 職場における腰痛予防対策指針(H6・9・6基発第547号)






11 熱中症の予防対策

 労働省は、最近の熱中症の発症事例を分析して「高温下での作業の危険性について認識のないまま作業が行われていることに、その根本的な原因がある」と指摘しています。
 具体的には、
 ・適切な休憩時間がとられていない。
 ・水分・塩分等の補給が適宜行われていない。
 ・作業者の健康状態が把握されていない。 
ことなどです。これらの点に留意して、適切な熱中症の予防対策を行う必要があります。


(参)
 






12 作業環境の評価に基づく作業環境管理


 作業環境測定の実施と評価

 ・労働安全衛生法は、作業環境測定を行うべき作業場として、10の作業場を指定しています。
 ・作業環境測定は、労働大臣が定める「作業環境測定基準」に従って行うことが必要です。
  作業環境測定基準では、
  「単位測定場所の設定方法、測定点の設定方法、測定時刻および測定時間の選定方法、測定に用いる機器の種類など」について、測定を行うべき対象ごとに定めています。
 ・測定結果は、「作業環境評価基準」(前記10の作業場のうち、粉じん、特定化学物質等、鉛、有機溶剤に係るものに適用されます。)に従って評価を加え、作業環境の状態を、「第1管理区分」、「第2管理区分」、「第3管理区分」の3つに区分することによって行います。


 作業環境測定士制度
 前記10の作業場のうち、粉じん、特定化学物質等、鉛、有機溶剤に係る作業環境測定は、作業環境測定士に(自社の作業環境測定士、ないし、作業環境測定機関に委託)よって、行うことが必要です。



(参)
1 作業環境測定を行うべき作業場一覧
2 
作業環境測定基準(H11.1.11改正労働省告示第2号)
3 管理濃度








13 職場における喫煙対策

 ・「職場における喫煙対策のためのガイドライン」に基づいた対策を推進します。

 ガイドラインでは、
 職場において、喫煙の影響が非喫煙者に及ぶことを防ぎつつ、喫煙者と非喫煙者が良好な人間関係の下に就業できるよう、事業場において講ずべき原則的な措置を示しています。

(参)
1 職場における喫煙対策のためのガイドライン(H8・2・21基発第75号)







14 労働衛生保護具

 労働衛生保護具には
  ・呼吸用保護具(有害物質の吸入による健康障害又は中毒を防止するためのもので、防じんマスク、防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器など)
  ・不浸透性の保護衣(皮膚接触による障害を防ぐためのもの)
  ・保護メガネ(眼の障害を防ぐためのもの)
  ・遮光保護具(有害光線を遮断するためのもの)
  ・防音保護具(騒音を遮断するためのもの)
 などがあります。

 作業状況に応じて、適切な保護具を選択して使用します。


(参)
1 防じんマスクの選択、使用上の注意
2 防毒マスクの選択、使用上の注意